ゆうりん家

ゆうりん家

書きたいものを書くだけの場所

18部屋目:「卒業ですね」の物語

こんばんは,ゆーりんちーです.

 

今回はAZALEAのユニット曲卒業ですね物語考察を.

 

f:id:yurinti:20180902164635j:plain

 

いやーこの曲好きなんですよね.

試聴段階からこれはやばいと思っていました.

 

「GALAXY HidE and SeeK」もそうでしたが,AZALEAの曲は私の好みドンピシャのものが多いです.

専門家ではないので細かな知識はありませんが,曲調も雰囲気も歌詞も全部好き.

 

そして考えたくなる.その物語を.

 

この曲は"卒業"に焦点を当てた曲.

そして,AZALEAが作りAZALEAが歌った曲

 

そういう前提で話を進めます.

 

この曲がどのような情景を描いた物語なのか.

 

歌詞から想像できる"歌詞そのもの"の物語をssで.

そして,曲の背景をつらつらと.

全部想像ですけどね.

 

可能なら歌詞と見比べながら読んでいただきたいです.

 

それでは,少しの間お付き合いください―――――

 

 

「もうすぐ卒業だね」

 

 

「そうですわね」

 

 

「今までは同じ道をあるいてきたけどさ,ここからは別々」

 

 

「はい,これまでのようには会えなくなりますね」

 

 

「時間が過ぎるのって早いね」

 

 

「……私もそう思います.同じ夢を追っていると,早く感じてしまうものなのでしょう」

 

 

「……ねえ」

 

 

「なんですか?」

 

 

「なんでこうなることを選んだのかな」

 

「この1年,いや,実際はもっと小さいときからだね,2人といられてすっごく楽しかった」

 

 

「なのに今は,自分たちからその楽しさを手放そうとしている」

 

 

「どうして,これからも一緒にいることを選ばなかったんだろ,私たち」

 

 

「……おそらくそれが大人になったということなのでしょう」

 

 

「そしてこれは,きっと誰もが通る道なのです」

 

 

「……そういうもんかね」

 

 

「そういうものです」

 

 

「……」

 

 

「……」

 

 

「色んなことがあったよね」

 

 

「ええ……」

「いろいろなことをして遊びました」

 

 

「高校生になってからは練習もした」

 

 

「……お別れもしましたね」

 

 

「……うん」

 

 

2人は想い返す.これまでの日々を.

 

 

楽しくても辛くても,毎日のように一緒にいたあの日々を.

 

 

そして改めて気がつかされる.

 

 

「そっか,もう会えないんだ(ですね)」

 

 

出会えたことは彼女たちにとって喜び.

 

 

もちろん悲しいことだってあった.

 

 

だけど,それらをひっくるめて全部大切な思い出.

 

 

(……大丈夫.思い出が無くなるわけじゃない)

 

 

(……大丈夫ですわ.この思い出はずっと私の中にあります)

 

 

2人は寂しさを感じながらも,自らの選択を悔いることはない.

 

 

「……ねえ」

 

 

「なんですか?」

 

 

「また……こんなふうになれるよね」

 

 

「こんなふうとは?」

 

 

「だからその……」

 

 

3人で一緒に笑ったり……泣いたりとか……」

 

 

「……そうですわね.きっと」

 

 

彼女たちはまだ知らない.

 

 

これほどまでの経験は,この先訪れることはないのだ.

 

 

今はまだ温かい彼女たちの思い出も,いつか懐かしく感じるときが来る.

 

 

その瞬間に向かって,2人はこれから別々の道を歩んでいくのだった.

 

 

発売当初,歌詞全文を読んで解せないことが1つあったんです.それは,

 

「……あれ,花丸どこ?」

 

卒業には,

卒業する側」と「卒業を見送る側」という2つの視点が存在します.

 

この「卒業ですね」は,明らかに「卒業する側」の曲です.

冒頭から,もうすぐ卒業する2人の会話として物語は進んでいく

 

ここから 右、左へ

貴方と私は

それぞれの未来選ぶでしょう

もう会えなくなるのでしょう

 

いくつもの夢を分かち合い

季節が過ぎ去る この速さ

 

卒業を目前に控えたある日.

夕暮れのベンチでしょうか,それとも放課後の教室でしょうか.

ダイヤ果南は静かに腰を下ろしています.

 

そこにはいつもの和気あいあいとした雰囲気はなく,どこか切なげに映る2人の背中が.

少しの沈黙の後,どちらからともなく口を開きます.

 

「もうすぐ卒業なんだね」

 

きっと2人とも,意識はしていたのでしょう.

これまでも,その話をしなかったわけではありません.

実際,進路の決意は3年生3人で共有しました.

 

それでも改めて実感する,それが近づいているという事実.

すなわち,別れの時

 

これまでは同じ道を,同じ夢に向かって進んできた

もちろん道を違えたことはあった.それでも,最終的にはまた1つになった.

 

しかし今回は違う.

また合流する保証なんてない.そもそも,そうする理由がない.

 

「……もう会えなくなるかもしれませんわね」

 

会いたくないわけじゃない.むしろ会いたい.

だけど,今までのように気軽にというわけにはいかなくなる.

会いたいと思っても会えないことがたくさんあるだろう.

その事実を目の当たりにし,2人は少し気持ちが沈んでしまうのです.

 

そうなると,自然と思い出されるのはこれまでの日々.

楽しいことも辛いこともあった.

それらも全部,今となっては良い思い出

なにより,スクールアイドルとして共に過ごした時間は,きっといつまでも自分の中で生き続けるだろう.

 

「時間が過ぎるのは早いですわね……」

 

過去を思い出し少し持ち上がった気持ちも,それが過去になった現実を想いまた沈んでしまうのでした.

 

卒業ですね 

今までの私たちから

手を離してしまったのは何故でしょう

いつの間にか 少しだけ

大人になったと感じてるの

たぶんね きっと誰もが通る道 ですね

 

どうして道を違える決心をしたのか.

全く今まで通りというわけにはいかなくとも,例えば同じ学校に通う,学校が違っても近くに住む,そのように会える機会を作りやすい環境を整えることはできたはずだ.

 

それでも,彼女たちはそうはしなかった.

3人の誰もが,そんな提案を一切せず,各々で進む道を決めた.

どうしてそうなったのか,彼女たち自身もいまいちわかっていない.

改めて考えてみるその理由.

話してみても,明確な答えなんて出ない.

 

だけどこれは,誰もが通る道なのだろうと.そういうものなのだろうと.

 

「きっと,それが大人になるということなのですわ」

 

なんて,少し知った風なことをいって大人ぶってみる.

 

いつの間にか,日は落ちて辺りは暗くなり始めていた.

 

お別れを告げる前に

貴方も私も

思い出の中を泳ぐでしょう

もう会えないと知るのでしょう

 

出会えた喜び 悲しみを持ってた

それでも悔やまない

 

もうすぐ別れの日がやってくる.

そのときが来る前に,彼女たちは改めて思い出を振り返るだろう.

その量は膨大で,それこそのようである.

 

そして思い知る.

 

「ああ……もうこんなふうには会えないんだ」

 

嬉しいこと,悲しいこと,どちらもたくさんあった.

それらを今,自ら手放そうとしている.

自ら道を分かとうとしている.

 

だけど,決してそれを悔やむことはない.

自分で選んだ道だから.

 

まだ,花丸はどこにもいない.

 

 

卒業だけど 

忘れないで抱きしめていたい

いつか懐かしい ときめきに変わる

二度とないってわかるのは

もっとずっと先ね

今は遠ざかるだけ そして明日は別の道 ですね

 

居た.

ここに居ました,花丸ちゃんが.

やはりこの曲はAZALEAの曲だった.

大筋は果南とダイヤが作ったであろう.それは間違いない.

でも,花丸が最後に加えていた.自分を込めていた.

 

特にここ,この部分

二度とないってわかるのは

もっとずっと先ね

ここは花丸にしか書けない.

少なくとも,卒業する当事者である2人には書けるわけがない.

これは明らかに"物語を外から見ている"人物の言葉.

別れを噛みしめている2人が,物語の登場人物である2人が「二度とないとわかるのはもっとずっと先」だなんて"物語を知っているような言葉"を紡げるわけがない.

それもここまで哀しい言葉を.

 

私は,この曲を作るときにこんなやりとりがあったのではないかと想像しています.

 

「それでは曲作りを始めましょうか」

 

「卒業の歌かー.どんな感じにしよっか」

 

「とりあえずは,みんなで"卒業"から連想できるものを挙げていきましょう」

 

「そうだね.そうしよう」

 

「……マルはパスするずら」

 

「……え?」

 

「どうかしたの花丸?」

 

「マルは歌詞作りには参加しない」

 

「急にどうしたんですの?」

 

「そうだよ.AZALEAの曲なんだよ?」

 

「たぶんAZALEAは,卒業する側の気持ちを歌にするべきだと思う」

「CYaRon!は見送る側になるだろうし……ギルキスはわからないけど」

「マルには2人の気持ちはわからない.だって見送る側だから」

「だから歌詞作りは2人にお願いしたいずら」

 

「ですが……」

 

「それじゃあ花丸が……」

 

「安心して欲しいずら.全くノータッチというわけではないずら」

「まず2人に書いてもらって,そこにまるが最後に自分の言葉を付け加える.そういう形でAZALEAの曲にしたい」

「……ダメかな?」

 

「……そこまで考えているのであれば,その気持ちを無下にするわけにはいきませんね」

 

「そうだね……わかった,じゃあダイヤと2人で考えてみるよ」

「その代わり,最後の仕上げは頼んだよ?」

 

「もちろん!任せるずら!――――――

 

こんな感じに.

花丸は3年生2人に歌詞作りを託した.

そして,渡された歌詞から物語を読みとり,そこに自分を付け加えた……語り手として.

 

そう,語り手

花丸は,2人の物語に自分を登場させることをしなかった.

この曲を卒業する2人の物語として完成させた.

あくまでも外から,あくまでもさりげなく物語をまとめることに徹した.

それがこのサビには表れているのである.

ちなみに,最初のssは地の文を花丸のつもりで書きました.

 

花丸だからできること.

多くの本に触れることで数多の物語を読み解いてきた花丸だから,

Aqoursの一員として,AZALEAの一員としてずっと2人の物語を見てきた花丸にしかできなかったこと.

 

しかし,1つだけわからないことがある

 

二度とないってわかるのは

もっとずっと先ね

 

「なぜこのような物語にしたのか」である.

このフレーズは,2人の物語の未来を物語っている

今これから道を分かつ2人.この先どうなるかなんてわからないはず.

もしかしたらどこかでまた2つの道は合流し,2人で幸せに過ごすかもしれない.

高校で描いた幸せな日々を,またどこかで迎えられるかもしれない.

そういう物語としてまとめることもできたはずなのである.

 

そしていつか2人また

道は繋がる

 

とか,そんな歌詞にすることもできたはずなのだ(私の案が酷いとかそういう批判ははNG)

 

しかし,花丸はそんな物語にはしなかった.

切なさを,哀しさを排さなかった.

どうしてなのだろうか.

正直なところ,これについては自分の中で納得いく結論がどうしても出なかったので,逆に皆さんに伺いたいのです.

 

一応いくつか理由を考えてはみたのです.

 

・哀しい物語が好きだから

・現実的にそうなると考えたから

・そうなって欲しいと思ったから

・似たような物語を読んだことがあって,その結末に準じたから

・他のユニットには無いAZALEAっぽさを出したかったから

・この哀しい物語を打ち破る3年生の姿が見たかったから

・そもそもこれは哀しい物語ではない(解釈がおかしい)

 

こんな感じに.

でも,どれも根拠がない.理由付けが甘い.

納得できる何かが欲しいのです.

 

どうでしょうか皆さん.

これだと思うという意見でも,別の考え方でも,私に投げてくれると嬉しいです.

 

 

 

さて,こんなところでしょうか.私が想うこの曲の物語は.

この曲はダイヤと果南という卒業する2人の物語

そこに花丸が語り手として,地の文としてそれを包んでいる

この曲を聴いてイメージした物語はこんなところなのでした.想像ですよ.

 

 

お付き合いいただきありがとうございました.

 

ファンミでこの曲を披露してくれるかな……そうだといいな……