ゆうりん家

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40部屋目:ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝~無言備忘録~

ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝」のネタバレ注意

 

2回目視聴直後の時点。

今後更新される可能性あり。

 

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ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝は、セリフのないシーンも素晴らしい。

これは、印象に残った無言シーンで感じたことを書き記す自分用備忘録。

あくまでも感じたこと考えたことを書いた。正解かどうかは知らない。それに注意。

文章も適当で構想もなにも無い殴り書き。自分がわかればいい。

 

1.デビュタントで踊っている最中エイミーが天井の鳥を見つめ、その後薄く微笑むシーン

 

「決心」と「諦め」。

 

このシーンは、スタートから続くエイミーの気持ちの変遷の締めのようなもの。

 

私はどこへも行けない。

 

全寮制の女学院に通い、卒業後は上流貴族に嫁ぐことになる。

そのことを、エイミー自身は理解している。

自分の人生は決まっている。もうどこへも行けない。

 

しかし、ヴァイオレットとの出逢いはその気持ちを揺らがせた。

少しずつ仲良くなり、ヴァイオレットに心を開いていくエイミー。

次第に、1つの想いが彼女の中で生まれる。

 

「彼女となら、別のところへ行けるかもしれない」

 

お互いの髪を結い合い、講義に遅れそうになり手を取り合い走る2人。

だからエイミーは言うのだ。

 

ねえ、どこか別のところへ行こうよ。

 

それまでの彼女なら、絶対に発しなかったであろう言葉。

ヴァイオレットとの生活がそうさせた。

 

行けませんよ。どこにも。

 

悪気など無かっただろう。彼女はただ事実を告げただけだ。

だが、その事実はエイミーを現実へと引き戻した。

そうだった。私はどこへも行けないのだと。

 

場面は戻りデビュタント。

鳥は自由の象徴。

あんな風に自由にどこかへ飛んでいきたかった。

でも、それはできない。

ヴァイオレットとの生活で夢を膨らませ、

ヴァイオレットとの生活で現実を直視し、

ヴァイオレットのおかげでそれを受けいれる決意ができた。

だからこその、

 

ありがとう。

 

2人での生活が最後であるあの日、あの場所でエイミーは心を決めたのだ。

 

 

2.エイミーとテイラーの出逢いで、テイラーの手に雪が落ち溶けるシーン

 

自分が生きるので精いっぱい。

そんな中、テイラーと出会った。

 

彼女に手を握られた。

伝わってきたのは、圧と熱。

その握力と体温は、その小さな少女が"生きている"ことをエイミーに理解させた。

 

そして、雪がテイラーの手に落ち、溶ける。

それは、その手に体温があることの視覚的証明。

テイラーが生きていることを尚強く伝えようとする。エイミーに。

 

その命の輝きを見て、エイミーは彼女を妹にすることを決意するのだ。

 

 

3.物語の最後、テイラーが「エイミー」と唱えなかったシーン

 

物語の最後、エイミーは大空に向けて「テイラー」と叫んだ。

その声で、想いを届けようとするかのように。

 

そして画面は切り替わり、何かに気づいたかのように窓際に近づき微笑むテイラーを映し出す。

初めて観たとき、彼女は「エイミー」と呟くんだろうなと思った。

前半の最後がそうだったし、流れとして自然だ。

離れたところにいる2人が、名前を呼び合う。良いではないか。

そうなったら、私は絶対泣くと思った。泣く準備をしてた。なんなら既に泣いていた。

 

でも、そうはならなかった。

微笑んで、「エイミー」と唱えなかった。

そうくるのか、と思った。

 

ならば理由があるのだろう。

 

これはあなたを守る魔法の言葉です。

「エイミー」ただそう唱えて。

 

唱える必要が無くなったのではないか。

 

前半と後半でのテイラーの変化がここに表れているのではないか。

 

その言葉は、ねぇねと自分を繋ぐか細い糸。

忘れ落ちていた姉の記憶は、「エイミー」という言葉によって呼び覚まされた。

しかし、それはほんな微かな灯火。

幾度も消えそうになるその火を、言葉を唱えることで保っていた。

自分は字が読めないから、何度も何度もシスターに読んでもらった。

そうして自分の中にねぇねを保持していた。

 

ねぇねは、離れていても私を想って手紙をくれた。

 

シスターに言われたその言葉を、自分の中で確かめるかのように。

 

だが、テイラーはエイミーに会った。

ねぇねが自分の手紙を読み、胸に抱き、涙する様子を直接その目で見た。

 

焼き付いたのだ。

 

「エイミー」という言葉によって確認していた、ねぇねが自分を想っていたという証。

目の前のねぇねの姿は、遥かに大きい確かな証として、テイラー心に刻まれた。

 

だから、唱えなくてもよくなった。

 

だって、唱えなくても、その火は大きく自分の中で輝いているから。

 

 

 2019/09/21 初稿