36部屋目:「Jump up HIGH!!」試聴に見た景色
気がつけば、青の中にいた。
限りなく広く、澄んだ青だ。
前を向くと、少女たちがいた。
良かった、まだいてくれたね。
後ろを向くと、みんながいた。
そうだよね。これは、みんなの物語だから。
ふと、下を見る。
遥か彼方に、道が見えた。
すぐにわかった。僕が、彼女たちと歩んできた道だ。
その小ささに、自分がこんなにも高いところにいるのだと気づく。
そうか、もうこんなところまで来たのか。
そして、理解した。
そうか、"時が満ちた"んだね。
ならば、僕は歌おう。
声に、ありったけの想いを乗せて。
みんなも歌おう。
その想いは、必ず彼女たちに届く。
ほら、彼女たちも歌ってくれている。僕らに届けてくれる。
そうして放出された無数の想いは、ぶつかり、混ざり合い、境界なんて曖昧になるほどドロドロになって溶けて、消えていく。
消えていく―――
―――はっ
気がつけば、そこは大きなスタジアムだった。屋根はなく、頭上には綺麗な青空が広がっている。
観客席はグルっと9色に隙間なく彩られ、その中心には9人の女性がいた。
「Jump up HIGH!!」が、ちょうど流れ始めたところだった。
なんだか、とてつもなく長い時間を過ごした気がするが、まあいい。
彼女たちは歌う。拳を上へと掲げて。
その様子は、僕らを魅きつける。
その姿に導かれるかのように、ひとり、またひとりと、拳を掲げて声を出し始める。
小さかったそれらは、重なり合い、やがて大きなひとつの波となり、会場全体を包み込んだ。
そして、大きな1つの歌になった。途方もないエネルギーの塊に。
その塊は、だんだんと空へと昇っていく。
どこまでも、どこまでも、高く、遠くへ。
それはどんどん小さくなり、小さくなり、そして、ついに見えなくなった。
歌が聞こえた。