ゆうりん家

ゆうりん家

書きたいものを書くだけの場所

12部屋目:「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」感想考察(後半ネタバレあり)

こんばんは,ゆーりんちーです.

 

今年もポケモン映画の季節がやってきました.

 

f:id:yurinti:20180725234520j:plain

 

2018年のタイトルは

 

劇場版ポケットモンスター みんなの物語」

 

です.

いや~良かった.もうタイトルから良い.

その名の通りみんなの物語でした.

 

今回は,前半ざっくりとストーリーを紹介して,後半ネタバレありで内容について少し言及していこうと思います.

 

それではスタート.

 

 

○あらすじ

 

"フウラシティ"・人々が風と共に暮らす街.

そこでは1年に1度の祭典,"風祭り"が開催されていた.

祭りの最終日にはルギアが現れ,恵の風を人々に与えるという.

 

偶然この街を訪れていたサトシは,そこで5人の人間に出会う.

そして耳にするゼラオラの呪い

 

いったい呪いとはなんなのか.

そしてゼラオラの正体とは.

みんなの物語が1つに交わるとき,運命の歯車が動き出す―――.

 

 

 だいたいこんな感じ.

 

この映画ですが,タイトルの通り「みんなの物語」という点に大きな重要性を持たせています

そしてサトシも,この"みんな"の1人なのです.

言ってしまいますが,本映画のサトシは主人公であって主人公ではありません.

他の劇場版に比べると,その主人公性は薄いと言えます.

 

しかしそれは悪いことではありません.

そうであるがゆえに"みんなの物語",だからこその"みんなの物語"なのです.

登場人物それぞれが,それぞれの物語の主人公なのです.

 

f:id:yurinti:20180724212013j:plain

 

ここに,サトシを含めた6人が写っていますね.

この6人が,今回の主な"みんな"になります.

 

ざっくり紹介すると,左から順に

 

気弱な研究者・トリト

ポケモン初心者・リサ

主人公・サトシ

謎の少女・ラルゴ

ホラ吹き・カガチ

変わり者・ヒスイ

 

です.

 

以下,それぞれの物語ついて言及していきます.

 

ここからはガッツリネタバレを入れていきますので,まだ見ておらず,見る予定がある人はここで読むのをやめてください.

事故を防ぐために少し行を空けます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○サトシ

f:id:yurinti:20180724212858j:plain

 

ポケットモンスターの主人公・サトシ

サトシの物語はいつの世も変わりません.

 

ピカチュウと歩む物語」

 

いつだって,どこにいたって,ピカチュウとなら何だってやれる.

その芯の強さはやはり安心感がありますね.

 

身を挺してバンギラスを助けるシーン.

 

「頼んだぜ相棒!」

 

そう言ってピカチュウとは別のルートを進みます.

そこには迷いも一抹の不安もありません.

あるのはただ1つ,"心からの信頼"

 

そしてそれはピカチュウの側も同じ.

パートナーが側にいなくても与えられた命をこなす.

細かな指示なしにあそこまでの行動をとれるのは,サトシとのこれまでの経験ゆえでしょうか.

 

トレーナーとポケモンという立場はあれど,実際その関係は対等

お互いがお互いを認め信じているからこそ,そうあれるのでしょう.

 

 

あと,これは個人的な感想ですが,本作のサトシは頼もしさがより際立っていましたね.

これは後述する他の人の物語が暗いものを含むからでしょうか.

そのぶんサトシの光が目立ったのかもしれません.

 

 

 

○リサ

f:id:yurinti:20180724223711p:plain

 

ポケモン初心者の少女・リサ

 

彼女の物語は,

 

「頑張りを取り戻す物語」

 

リサは最近まで陸上部に所属していました.

その実力は折り紙付きで,地方大会で優勝するほど.

 

しかし,あるとき怪我で陸上部を去ることになります.

 

そんな彼女は,弟からのお願いでフウラシティにイーブイを捕まえに来ることに.

断ればよかったと後悔しつつも,サトシの協力のおかげでなんとかそれに成功します.

 

終えてみると,その胸は初体験の興奮に包まれていました.

だけど,最初はなかなかイーブイと仲良くなれません.

 

そんな中訪れるフウラシティのピンチ.

リサに与えられた使命は,聖火をスタジアムまで届けること.

 

しかし,そこから目的地まではかなりの距離があります.

そこでよみがえる過去のトラウマ

怪我は治ってる……走ろうと思えば走れるはず……でも……

 

勇気が出ずに躊躇うリサ.

それに対し,イーブイは聖火を彼女のもとへ運ぼうとします.

その重さはイーブイにはかなりのもの.そしてイーブイ自身足を怪我しているというのに

 

f:id:yurinti:20180724230411p:plain

 

「どうしてそんなに頑張れるのよ!!」

 

泣きながらリサは叫びます.

あなたも辛いはずなのに,苦しいはずなのに,どうしてそこまでできるのか.

 

その姿は,自分が過去に置いてきてしまったものだったから.

できるはずのことから逃げている自分が,情けなくなったから.

 

苦しい,怖い.でも私がやらなければならない.

1人だったらきっとできなかっただろう.

でも,今は仲間がいる.イーブイがいる.

みんなとなら,きっとできる.

 

止まっていた彼女の物語が先へと進んだ瞬間でした.

 

 

私は6人の中でリサが1番好きです.

ちょっと自分と重なるところがあるので.

 

リサは,挫折を経験したことがある人,特にそこからまだ立ち直りきれてない人にとってはかなり刺さるのではないでしょうか.

 

 

余談ですが,最初にリサのビジュアルを見たとき,ムサシが浮かんだのは私だけでしょうか?笑

 あと,あの弟何物やねん.

 

 

 

○トリト

f:id:yurinti:20180724233035p:plain

 

気弱な研究者・トリト

 

彼の物語は,

 

「勇気を手に入れる物語」

 

彼は極度の人見知りです.

人と接するのが苦手.人前で話すのが苦手.

だけど,誰よりもポケモンを想い,誰よりもポケモンに好かれています.

 

そんな彼は,研究発表という大役を果たすために,大会でカガチに協力するという不正行為を行います.

それは発表を成功させるため.いけないことだとわかっていても,どうしても人前で話せないトリトはカガチに代役を頼むしかなかったのです.

 

しかし現実は無情.

時間までにカガチは到着せず,先の不正が発表中にバレてしまいます.

ロケット団によってそれらは有耶無耶になるのですが…

 

そんな彼を襲うさらなる辛い現実.

彼が研究を進めていた「胞子のクスリ」によって,フウラシティが大ピンチに陥ります.

ロケット団が悪いとはいえ,トリトに落ち度が無かったとは言えない.

自分が作った薬のせいでこんなことになるなんて…彼の苦しみはひとしおでしょう.

 

それでも彼は,街を,人々を,ポケモンを救うために行動する決心をします.

 

f:id:yurinti:20180725122025p:plain

 

「いいから僕の話を聞いて!!」

 

彼が勇気を手に入れた瞬間でした.

彼の役目は「胞子のクスリ」を中和するクスリを作ること.

しかし,それは1人ではできない.みんなの協力が必要でした.

今まで1人で研究を進めてきた彼が,初めて周りを頼ったのです.

 

そんなトリトをみて他の研究者も協力することを決意し,無事にクスリを完成させることができました.

 

 

人と関わるのが苦手な人,何でも1人でやろうとしてしまう人にはトリトは刺さるのではないでしょうか.

 

あと,あのラッキーすごく良かったですね.

決して引っ張るわけではない.あくまで控えてトリトの背中を押す.

大和撫子かな?

 

 

 

○ヒスイ

f:id:yurinti:20180725123413p:plain

 

変わり者のおばあさん・ヒスイ

 

彼女の物語は,

 

「トラウマを乗り越える物語」

 

ヒスイは映画の冒頭から,異常なまでのポケモン嫌いとして描かれます.

自分の近くにポケモンが近づくことさえ許さない.

近づこうものなら杖を振り回して追い払う.

 

あるとき,研究所を訪れたヒスイに「あまいかおりのクスリ」がかかってしまいます.

その効果は"ポケモン寄せ".

追い払っても追い払ってもポケモンたちはヒスイのもとにやってきます.

観念したのか,途中からは諦めていましたね.

 

そんな中,フウラシティにピンチが訪れます.

ヒスイの役割は「旧発電所を動かすこと」.

発電所のプロペラを回すことで,中和薬を霧散させるのです.

 

目的地を目指して山を登るヒスイとカガチ.

そんな彼らの前に山火事が立ちはだかります.

 

カガチとポケモンたちは炎を消して直進しようとしますが…

 

「それだけは許さないよ!!」

 

必死の形相でヒスイはそれを止めます.苦しそうにその場にうずくまりながら.

思い出されるのは過去の山火事.

その山火事で,彼女は最愛のポケモン・ブルーを失っていたのでした.

 

そう,ヒスイはポケモンが嫌いなんかじゃなかった.

むしろ大好きだった.

しかし,そのせいで大きなトラウマを背負ってしまった.

 

またあんな思いをするくらいなら…大切なものを失うかもしれないのなら…そんなもの,自分には必要ない.

そんな想いのもと,彼女はポケモンと関わることをやめたのでした.

 

だけど今,またポケモンたちが炎に向かっていこうとしている.

もう嫌だ,目の前で仲間を失うのなんて嫌だ,お願いだから行かないでおくれ…

 

それでも彼らは進みます.

「大丈夫だ,今は仲間がいる」

そんなカガチの言葉とポケモンたちの眼差しに打たれ,遂にヒスイは覚悟を決めます.

彼女が過去を乗り越えた瞬間でした.

そして道を切り開いたのち,無事に発電所を動かすことに成功したのです.

 

 

彼女の物語は,この6人の中で最も重く暗いものです.

大切な存在を失った経験がある人にはとても刺さるのではないでしょうか.

私はまだその経験がありませんが,それでも泣いてしまいました.

 

あとこれは想像ですが,ポケモンたちはヒスイがポケモン嫌いじゃないと気がついていたのではないでしょうか.

いくら「あまいかおり」がするとはいえ,あそこまで自分たちを嫌う人間についていこうとするでしょうか.

きっと彼らは,追い払われても本心では敵意がないことがわかっており,だからこそ安心して側にいたのではないでしょうか.

まあ,想像ですがね.

 

 

 

○カガチ

f:id:yurinti:20180725132948j:plain

 

ホラ吹きの男・カガチ

 

彼の物語は,

 

「過去の自分と決別する物語」

 

彼は嘘つきです.見栄っ張りです.

自分をよく見せようと,多くの嘘をついてきました.

姪のリリィにとって理想の姿であろうと,大会で不正も働きました.

 

でも,彼はわかっています.

こんなのは良くないと.このままではダメだと.

 

「自分を偽るのはやめておけ」

 

カガチがウソッキーに投げかけた言葉.

自らの経験が乗った,あまりにも重い言葉.

これは自分に対しても放った言葉だったのではないでしょうか.

 

そんな中,「胞子のクスリ」によって妹と姪ががピンチに陥ります.

どうにかしないと…そう思うカガチでしたが…

 

f:id:yurinti:20180725134206p:plain

 

「俺に,リリィを助ける資格なんて…」

 

嘘がバレてリリィを悲しませてしまったカガチは,そんな自分に助ける資格なんてないと言う.

しかし,ウソッキーはカガチの前に立ちはだかります.

「どうして助けにいかないんだ.大切な姪じゃないのか」

「あのとき僕を助けてくれたかっこいいカガチはどこに行ったんだ」

 

言葉はわからなくても,そんなウソッキーの悲痛な叫びはカガチの胸に届きます.

「俺と一緒に来てくれるか?」

 

自らを受け入れた瞬間でした

そうしてウソッキーは正式にカガチのポケモンとなり,クスリをプロペラに当てるという大役を果たしたのでした.

 

助けに行くことを決意したときに,

「嘘をやめる」

ではなく,

「助けるためなら嘘だってついてやる」

と言っていたのがなんともカガチらしいなと.

 

 

リリィにピッピにんぎょうを取ってあげるために中心に当てた的当て,ポケモンを捕まえる大会(名前忘れた)でウソッキーを避けてゴルダックにボールを当てたこと,

これらに見られるコントロールの良さが,最後にプロペラに薬を当てる伏線になっていたのは良かったですね.

 

そんなカガチは,自分を偽る嘘をついてきた人には刺さるのではないでしょうか.

 

 

 

○ラルゴ

f:id:yurinti:20180725135930j:plain

 

謎の少女・ラルゴ

 

彼女の物語は,

 

「恩を返す物語」

 

彼女は市長の娘.

風祭りをとても楽しみにしていました.

 

そんな彼女の知られざる過去.

ラルゴは昔,ゼラオラに命を助けられたことがありました.

しかし,そのときの影響でゼラオラは大きな怪我を負ってしまったのです.

 

責任を感じたラルゴは,直るまで人知れず食事をゼラオラのもとに運ぶことにします.

 

「今度は私が守ってあげるからね」

 

あのときは私が守られた.次は私が守る番だと.

 

そんな中,カガチの一言でトレーナー達がレアポケモンの存在を認識してしまいます(もちろんカガチ自身はゼラオラのことなど知りません).

それにより,意図せずゼラオラが狙われる身になってしまうことに.

 

なんとかゼラオラを守ろうと,ラルゴは風祭りを中止にさせようとします.

石や洗剤を撒き,聖火を奪ってまで.

 

しかしその思惑は叶わず,サトシや市長にゼラオラの存在がバレてしまいます.

そこで明らかになるゼラオラの呪いの真実.

嘘の言い伝えは市民の贖罪だと.

 

そんな中発生する山火事.

ゼラオラは前と同じようにポケモンたちを助けに向かいます.

しかしゼラオラは手負いの身.

ラルゴは心配でゼラオラのもとに駆け出すのでした.

 

 

今作でラルゴは,フウラシティを救うために明確な役割が与えられていたわけではありません.

 しかし,ラルゴにしかできないことがありました.それは,

 

ゼラオラと人間との橋渡し」

 

ラルゴはゼラオラが唯一心を許した人間でした.

ラルゴが運んでくれた食事を食べ,ハンターからラルゴを守りました.

 

彼女がいなかったら,きっとゼラオラは人間に協力することはなかったでしょう.

 

 

ラルゴは,人から大きな恩を受けたことがある人には刺さるのではないでしょうか.

その大きさのあまり,悪いことに手を出してでもその人のためになることをしたいと思うその気持ち.良し悪しは置いておいてなんと健気なことか.

 

そんな彼女の純真さが透けて見えたからこそ,人間嫌いのゼラオラもラルゴを助けたのかもしれませんね.

 

 

以上,みんなの物語まで.

セリフ等は記憶頼りなので,間違っていたら申し訳ありません.

 

 

 

 

私は基本的に良いと思ったものは全肯定侍になることが多いのですが,

一応感想考察と銘打っているので,批評めいたことを少しだけしておこうと思います.

 

読みたくない人は次の青字まで飛ばしてね.

 

 

 

本作を見ている中で,もしかしたら人によっては気になるのではないかと思う点が1つあったのでそれについて.

 

少しだけ気になったこと,それは

 

「物語がふわふわしている」

 

ということです.

本作は「みんなの物語」と題して複数人の物語にスポットを当てています.

それが最大の長所なのですが,そうであるがゆえに短所も生み出していると言えます.

 

簡潔に言うと,物語の大きな軸に乏しい.

 

物語には何か軸と呼べるものが重要になることが多いです.

例えば巨悪を倒す,大会で優勝を目指すなど.

物語の目的と言ってもいいかもしれません.

ラブライブなら,ラブライブ優勝や廃校阻止など)

それを軸として,登場人物や環境がゴールを目指して進んでいきます.

 

そしてこの軸が,本映画では中盤になるまでハッキリしないのです.

クスリが撒かれるという事件が発生し,キャラクターがそれを解決するという目標に向かって一致団結する.

ここに達するまでに多くの時間が経過しています.

 

ですが,これは"みんなの物語"である以上避けられないことでもあるのです.

本作では主人公を6人据えており,半ば群像劇のような様相を呈しています

 

6人の物語を描く以上,それぞれを最低限説明する必要があります

それらは最初交わらないもの,

言ってしまえば,6つの細い糸がそれぞれ伸びているような形なのです.

そして中盤でその6つの糸が交わり,太い1本の糸となる

ここが事件の始まりで,大きな物語の始動でもあります.

 

ここにくるまでに時間がかかっているというのが,ある意味では短所とも言えてしまうのです.

 

もちろん日常系のように,軸が必要ない物語もあるのですが.

 

えーこんなことを書きましたが,正直別に気にならなかった人が多いと思います.

私も気づいてしまったとはいえ,気になるというほどものではありません.

あと注意していただきたいのは,

この短所はこの作品を貶めるポイントにはなりえません.

だってこれは,みんなの物語だから.みんなの物語だからこそこういう形式になっているのだから.

強いて言うのなら,時間が足りないことが問題でしょうか.

例えばもう少し時間が長く用意されていたならば,6つの物語をより鮮明に描き,より群像劇としての性質(みんなの物語としての性質)を濃くすることができたかもしれないからです.

 

勘違いしないでくださいね.

私はこの映画大好きですから.めっちゃよかったと思ってますから.

 

批評ここまで.

 

気分を害した人がいたら申し訳ありません.

 

 

最後に,

この物語はパートナーの存在というものを大きく描いています.

 

サトシ ⇔ ピカチュウ

リサ ⇔ イーブイ

トリト ⇔ ラッキー

ヒスイ ⇔ ブルー

カガチ ⇔ ウソッキー

ラルゴ ⇔ ゼラオラ

 

サトシもこんなことを言っていますよね.

 

「1人でできないことも,ポケモンがいるとなんでもできるって,なんか思うんだ」

 

自分の物語だとしても,1人では立ち止まってしまうことがあります.

そんなとき,心を許せるパートナーがいれば乗り越えられるかもしれません.

そんな存在を見つけられる日が,いつか来るといいですね…

 

 

あ,最後って言ったけどもう1つだけ.

主題歌もめっちゃ良いです.

ポルノグラフィティの「ブレス」.是非ちゃんと聴いてみてください.

好きな歌詞は「ネガティブだって君の大事な欠片」です.

 

 

以上,お付き合いいただきありがとうございました.